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ep2 プロローグ(2)

Author: 根上真気
last update Last Updated: 2026-02-03 17:04:12

 ガチャッ

 二人が談笑しているところへ、いきなり水を差すように部屋のドアが開いた。二人は驚いてそちらへ振り向く。

「ど、どうしたんだ?」と颯が突然の来訪者へ向かって尋ねた。どうやら彼の知り合いのようだ。

「ひょっとして......」虎白は勘づく。「ハヤテの元カノ?」

 虎白の言葉は颯へささやいたものだったが、女が反応する。

「私はハヤテの彼女。てゆーかコイツがアンタの浮気相手??」

 女は颯を睨みつけた。

「ちょっと待て」颯が立ち上がる。「リコとは昨日別れたよな? いやその前になんでここに入って来ることができたんだ?」

「これよ」女はキーを手に持って見せた。「スペアを作っておいたの」

「い、いつの間に!?」

「もちろんハヤテに気づかれないようにだけど」

「お、おまえ、それ、悪質なストーカーと同じだろ......」

「はあ!?」女はキーを思いきり颯に向かって投げつけた。「加害者のクセしてなに被害者ヅラしてんのよ! このクズ男!!」

「お、おい、近所迷惑になるから騒ぐなって」

「もう浮気はしないって約束したわよね!?」

「あれからはもう女遊びはしてないって昨日も言っただろ?」

「浮気がバレる前に私のことを捨てたってだけでしょ!」

「違うっての!」

「じゃあその女は誰よ!?」女が虎白を指さした。

「ぼ、ボク??」虎白は仰天する。

「待て待てコイツは男だよ」颯はうんざりしたように溜息をつく。「被害妄想もいい加減にしてくれ」

「ひがいもうそう? 今アンタ、被害妄想って言った??」

 ただでさえ激怒していた女の怒りのボルテージが俄然急上昇する。どうやら触れるべきでないスイッチを押してしまったようだ。

「だから落ち着けって」と颯がなだめようとするが、手遅れだった。

「私が今までどれだけ辛くて苦しい思いをしていたかわかる!? それがすべて私の被害妄想のせいだって言うの!?」

「そ、そこまでは言ってないだろ」

「いいや、あなたは思ってる! 私が傷つくことなんてどうでもいいと思ってる!」

「そんなこと思ってないって! そうやって勝手に思い込むのはやめろ!」

「思い込み??」

「思い込んでるだろ。そもそもコイツは男だし」

 颯は虎白の肩に手を置いた。

「そ、そうです!」何か言わなきゃと虎白も声を吐いた。「ボクとハヤテは同性の友達です!」

「ああ、そういうことなのね......」

 女は妙に静かな反応を見せる。不気味だった。

「リコ......?」

「ハヤテもその女も、私を惨めで可哀想な女だと思ってバカにしているのね......」

「お、おい、なにを言ってんだ?」

「もう耐えられない......」

「リコ?」

「ころしてやる......」

「えっ?」

「殺してやるっ!」

 女は肩に下げたバックから何かを取り出すと、バッグを床に投げ捨てた。

「なっ!?」と二人が目を見開いたのも束の間、女は颯に向かって勢いよく突っ込んできた。

「あああ!!」

 颯と女が折り重なるように床に倒れた。いや、正確には少し違う。二人の間には虎白の小柄な体が挟まっていた。すんでのところで虎白が親友の盾になっていたのだ。

「ごふっ......」

 虎白はえずいた。大量の吐血とともに。彼の腹部には、刃渡り二十センチの包丁が見事に突き刺さっていた。

 結局、彼は病院到着前に亡くなった。

 凶器は肝臓を貫通し、大動脈や脾臓ひぞうまでをも損傷していたという。虎白の記憶の最後にあるのは、急激に薄れていく意識の中、自分の名前を叫ぶ親友の声だった。

 こうして、火野虎白の人生は、まだ若くしてその幕を閉じたのである。閉じたのであったが......。

 何の因果か。どんな運命なのか。彼はこれから、別の者として新たな人生を歩むことになるのである。しかもそれは、この世界の話ではなかった。

 ここに今、転生した魔女の物語が始まる。

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